21世紀初頭・東京。
前大戦以来、南北を他国に占領され続けている日本帝国において、その名は首都としてではなく、最悪の無法都市として知られている。
折しも世界はテロリズムの大流行の渦中。そんな時代にあってなお特筆すべき東京に、しかし銃声は響かない。爆音が轟くこともない。
聴こえるものは剣撃の音。無数の刃鳴。
旧帝都東京府は警察力を火器規制という一点に注いだがため、それらによるテロの悪夢は免れていたが、代わって鋼の刃による闘争が白昼横行するという奇怪な魔境となっていた。
市民は怯え、兇徒は襲い、武人は戦う。
これは、そんな荒廃の都市で数多綴られた、小さな戦記録の一つ。
剣狂者・武田赤音と、彼に斬られた想い人の仇討を遂げんとする復讐鬼にして魔剣「昼の月」の使い手・伊烏義阿との、相克の物語である。 |
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