「脱ラブストーリー宣言」から生まれた“悪女ピカレスク”

　「ニトロプラスの既成作品もすでに八作。そろそろ我々はラブストーリーを脱却し、より違った形のエロティック・エンターテインメントを模索するべき頃合いではないか？」
　２００５年６月、企画会議で虚淵玄が配布した企画書は、恋愛物語を禁じ手とするところから始まっていた。そして、さらにこう続く。
　「そこで本企画が提案するのは、『悪女ピカレスク(＝ならずもの)』路線である。」

　マカロニウェスタンのスタイルと、悪女ピカレスクというテーマの親和性は万全である。マカロニウェスタンの『強欲・裏切り・復讐』という三位一体は、ピカレスク物語のフォーマットとしては最適といえよう。
　「今回、いつものニトロ汁はぜんぶ女が持ってってますね。まぁ別の意味で濃い男どもはわんさか出てきますけど。」(マックス刊「ＰＵＳＨ！！６月号」より抜粋)と、本作で登場する男たちについての問いに虚淵はこう答えている。
　愛や甘酸っぱい心のふれあいはなく、ただ、男をそそる色気たっぷりの女たちが破廉恥の度を超したバイオレンスで暴れ回り、ときに男にレイプされ、ときに男をレイプして、クールに、スタイリッシュに、悪逆非道の限りを尽くす。マカロニウェスタンは、悪女ピカレスクと融合し、エロゲーへと、性の荒野の物語へと、転生を遂げたのだ。