その均衡を打ち破ったのが、21世紀初頭におけるサイバネティクス技術の実用化である。
肉体を機械化することで、いとも容易く超人的な体機能を身につけられるようになった外家拳士たちは、
それまで縛られていた肉体的限界という枷から一気に解き放たれた。
そんな外家拳士たちに対し、厳しい修練を耐え抜いた者しか会得できない内家功夫は、もはや拮抗する勢力たり得なかった。
内家拳士が氣を運行する上では、生身の肉体に備わった“経絡”が必要になる。
彼らにサイボーグ化という選択肢はなかったのである。
こうして内家功夫は廃れ、武林の趨勢は一気に外家功夫へと傾くようになった。
だがしかし内家功夫の一派もまた、新たな脅威に対する新たな秘術を編み出しつつあった。
それが『電磁発勁』、対サイボーグ気功術である。
体内の氣の運行によって瞬間的に電磁パルス(EMP)を発生させ、それを掌力として解き放つ。
電子デバイスの内部回路に電磁誘導を引き起こして瞬時に破壊してしまうこの技は、
むろんサイボーグのボディに対しても一撃必殺の威力を発揮する。
使い手の肉体に過度な負担をかけるため禁術とされた技ではあるが、生身の人間がサイボーグに対抗しうる唯一の武術でもあった。
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