これは英雄の物語ではない。 英雄を志す者は無用である。
超能の鎧「劔冑」を駆る戦士「武者」が戦場を席巻する世界。
非公式の警官を称する男・湊斗景明は、赤い劔冑「村正」を纏い、ある時は卑劣な連続殺人犯に、またある時は軍兵の暴虐に挑み、最強の武者たる己の力
をもって打倒する。だが決して、彼が正義を称することはない。「鬼に逢うては鬼を斬り、仏に逢うては仏を斬る」——劔冑との合身を果たす時に彼が口にする
一句、それは過去を語り未来を予言する、真実の言葉なのである。
彼は殺すのだ。悪だけでなく、悪に虐げられていた善良な人々をも。
これは驚くべきことであろうか? 否。
何故なら彼の劔冑の銘は勢洲右衛門尉村正。
呪われし「妖甲」、かつて大和全土を地獄に変えたことすらある、かの村正なのであるから。